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ゴニン デ イッシュ





        互いの読みを持ち寄ることで、
        歌の味わいが変わっていく(かも)。
        毎月ある短歌1首について5人が鑑賞文を書く、
        「山羊の木」の期間限定企画です。
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【第3回(みずな)】錦見映理子
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    gonin3nishikimi

     一人暮らしの女の子。夕食を作ろうとして、水菜が足りない、と車でスーパーに向かったはずだった。五分もかからない場所に行くはずだったのに、部屋を出て車に乗って、スーパーに着くまでの間に、心のなかで何事かが起こり、そのまま高速に乗り、三時間もかけて恋人の部屋まで来てしまった。そういう歌だと思う。

     この歌は、息をはずませている感じがする。四行詩みたいな表記だが、これは短歌であるから、このようなリズムで読むだろう。

    みずなかいに・きたさんじかん・こうそくを・とばしてこのへ・やにみずなかいに

    (6・7・5・7・8と、ほぼ定型が守られている。二つの「字あまり」も過剰な精神状態を表すのに効果的)

     この句切れに、行の分け目を/で挿入してみると、こんな風になる。

    みずなかいに・きた/さんじかん・こうそくを・とばしてこのへ・やに/みずな/かいに。

     音で読むリズムと表記の区切りが脳内で交わって、さらに歌は切れ切れになり、息がはあはあしている感じがするのだろう。

     この部屋には水菜は売っていないだろう。欲しいものはここには無い。でもここには、水菜よりもっと欲しいものが、私のいのちを左右するような、本当に欲しいものが、あるかもしれない。そうあってほしい。

     どこにもない、でもどうしても必要なもの。足りなくて、息が苦しい。それを探して、必死で息をはずませて、ここまで来た。その切実さに、強く胸を打たれる。



    錦見映理子(にしきみ・えりこ)
    未来短歌会所属。歌集『ガーデニア・ガーデン』
    http://www.ne.jp/asahi/cafelotus/eliko/



    【第2回】他の4人を読む
    奥田亡羊――分かち書きゆえに可能となる表現
    小島なお――夢と現実の狭間を漂う
    佐藤通雅――これはプロポーズの歌だ
    永井祐――わたしはみずなと親しくない

    「ゴニン デ イッシュ」とは
    | 第3回(みずな) | 00:00 | - | - | - | - |