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ゴニン デ イッシュ





        互いの読みを持ち寄ることで、
        歌の味わいが変わっていく(かも)。
        毎月ある短歌1首について5人が鑑賞文を書く、
        「山羊の木」の期間限定企画です。
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【第4回(罪)】服部真里子
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    ゴニンデイッシュ服部


    「あはれ罪なくて配所の月を見ばや」──罪を犯さずして、配流の地の月を見たいものだ、と語った男がいた。人里の喧騒から遠く離れて、ひそやかに月と正対する時間を持ってみたかったのだろう。なるほど、確かに月には、人の魂を研ぎ澄ませる何かがある。なにひとつ恥じるところのない、清冽な心もちで見上げたなら、その光はどれほど美しいことだろう。

    しかし──違う、とこの歌は言うのである。

    それは、月の真の美しさではないと。月というものは、罪を得てこそ見るべきだと言うのである。

    白日の下では身をひそめ、闇の中にのみ姿を現す天体の艶冶な美しさは、罪を犯したことのない者にはわからない。心のどこかに枷をつけた者だけが、その翳りある美貌を感じとることができるのだ。

    「犯さざる非力の腕」は、少女のものだろうか。その幼さと非力さゆえに、彼女はまだ汚れを知らない。ただ、世界の不思議さへの憧れをいっぱいに湛えた目で、夜空に懸かる月を見ている。仄青い光に触れてみたくて、そっと両腕をさしのべる。

    その腕に、ひたりと寄り添ってくる闇がある。君はまだ月の真の美しさを知らない、知りたくはないのかい、と誘いかけるように。少女は息をのみ、目を見開いて、ひとつ大きくうなずくだろう。そして彼女は、月を仰ぐにふさわしい女性となるのである。



    服部真里子(はっとり・まりこ)
    1987年横浜生まれ。町・早稲田短歌会所属。歌歴4年目。


    【第4回】他の4人を読む
    高島裕――この時代を生き抜こうとする意志
    谷村はるか――罪もまた賜わり物
    東郷雄二――馬場が引き受けようとしている宿命とは
    虫武一俊――月も闇をそばに抱えている

    「ゴニン デ イッシュ」とは
    | 第4回(罪) | 03:04 | - | - | - | - |