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ゴニン デ イッシュ





        互いの読みを持ち寄ることで、
        歌の味わいが変わっていく(かも)。
        毎月ある短歌1首について5人が鑑賞文を書く、
        「山羊の木」の期間限定企画です。
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【第5回(公務)】今橋愛
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    ゴニンデイッシュ5今橋


    公務員という言葉の意味がわからないので知人にあれこれ聞いた。
    そうすると、現在のこの国における公務員の過酷な労働状況のことなどを知った。
    わたしはそれをはっきりとは思い浮かべられなかった。そして、ああそうかと思った。
    この作者も多分一緒だ。あるいは、もっとぼんやりとしか結べないんじゃないのかなあって。

    だから、このうたの公務\公務員は、例えば庭に生えているはっぱの一枚というくらい。それをむしって、おもしろがってふふふ、と笑っているそれであって、先ほどの公務員という意味やメッセージからは、かなり遠いそれと感じる。
    そういうところからは大きく隔てられた場所が、この人の世界だったのでしょう。

    むしろ、真冬の星の匂い。
    この言葉にはこの人の実感がある気のする。
    この人は佐賀の有田というところの人です。陶器の町。
    この人は公務員というはっぱを ぴゃっとむしり、それをくしゃっとすると、そこからうつくしい冬の気配や空気とともに星の匂いがするのだと言う。いい詩だなあと思う。

    わたしも冬の星を知っている。この人と同じ陶器の町の冬。
    車をとめて空を見上げると、星が、目にすごく近くてきれいだったのを思い出せる。
    空気は冴えている。耳には何の音もしない。もししていても聞こえていない。冴えている、どころではない。冴えきっている。そう、冴えきっていた─町はちがっても、陶器の町は。どこか似ている気のする。この人も よく似た冬の星を見ていたんだろうなと想像する。ずっと都会で暮らすひとには、つくれないうただなあと思ったりもする。

    このうたを読み終えると、こころのどこかが浄化されているような気がする。
    とうめいなあめ玉を、すうっと、なめ終えている感じ。
    わたしならば、わたしの知る陶器の町の、ある冬を この一行で、もう体感しなおしている感じ。

    歌壇2月号。ひとつ前にはこんなうたがある。
     
    はるまきがみんなほどけてゆく夜にわたしは法律を守ります 

    下句。だいたいの人は、こんなことは言わないらしい。だけど。なんだかなあ。この人の「法律を守ります」は「ほんとに」守るような気がしてくる。なんか。なんでか。



    今橋愛(いまはし・あい)
    1976年大阪市生まれ。
    2002年北溟短歌賞受賞。歌集「O脚の膝」。
    同人誌〔sai〕、未来短歌会に所属。ホームページhttp://www.aaaperson.jp/


    【第5回】他の4人を読む
    島なおみ――言葉の意味の連関を少しずつずらしてゆく喩法
    高柳克弘――ともに傷を負う存在としての共鳴
    山田航――つまらないものが、きらきら輝きを放ち始める
    吉川宏志――引き算のかたちで見えてくる「私」

    「ゴニン デ イッシュ」とは
    | 第5回(公務) | 07:42 | - | - | - | - |